2024年8月20日
歯がキレイになると糖尿病も良くなる?
雑種猫
10歳以上 避妊済み メス
「最近体重が減ってきた」 「右の頬から血が出ている」
病院で見られた症状:
- 歯石付着
- 口臭
- 歯肉炎
- 排膿
- 強い痛み
右頬の出血は、外歯瘻と呼ばれる歯周病が原因で頬の組織が損傷してしまう病態です。
体重減少は食欲低下だけとは限らないため、一般状態の確認と精査を目的として全体的な血液検査を行いました。
すると、血糖値が 415 mg/dlと測定されました。
猫の血糖値参考基準値は75~150 mg/dlなので、かなりの高値でした。
歯周病とは別に、糖尿病も併発していると診断しました。
この猫さんは、インスリン製剤の注射とフルクトサミンを指標にした糖尿病のコントロールを行うとともに、歯周病管理を行っていきました。
フルクトサミンとは?
外歯瘻は比較的すぐに傷が塞がり、元気や食欲もありました。口腔内の歯科処置は体調を考慮しすぐには実施せず、飼い主様と相談しながらタイミングを見ることにしました。
血糖値のコントロールは6か月(180日)ほど不安定でした。飼い主さんは投薬と食事管理を徹底してくださっていましたが、なかなか数値が安定しませんでした。
180病日で、麻酔下での歯科処置を実施しました。 歯科処置の時間もある程度かかることが予想される重度歯周病であり、かつ高齢の糖尿病でしたが、安定した麻酔管理を行うことができました。
さて、歯周病の治療を行うと糖尿病はどう変わるのでしょうか。
フルクトサミンの変動を下のグラフに表しました。
また、血糖コントロール指標として、フルクトサミン測定を検査依頼させていただいた外部検査機関のコントロール指標を参考にさせていただきました。
フルクトサミン(μmol/L) | 状態 |
---|---|
450~ | 不良 |
400~450 | 可 |
300~400 | 良 |
300以下 | 良好 |
グラフから、歯科治療を行った180病日以降から糖尿病が安定し始めたことが分かります。
このように、歯周病と糖尿病の治療には密接な関係があります。
これは人の歯科学会でも研究データとして報告されています。糖尿病に限らず、歯周病は腎臓病、心臓病など様々な病気を罹患させる原因となると報告されています。
犬猫も同様に、歯周病が他の臓器に影響する可能性から、歯周病の治療や予防を行うことが他の疾患を抑えて快適な生活をより長く続けることを後押ししてくれると考えられています。
人も動物もデンタルケアは大切ですね!
少し話が脱線しますが、この夏から猫の糖尿病の治療方法で、注射薬の他に飲み薬が販売されるようになるそうです。海外には既にあったようですが、日本では初めてでありその効果が注目されています。 糖尿病は長期的な治療なので、血糖コントロールに悩む猫さんたちにより簡単な治療を提供できたらいいなと願っています。