Osumi

2024年11月3日

アロペシアXが悪化した?

ご来院された動物さん

ポメラニアン
4歳 避妊済み メス

ご来院の理由

「現在アロペシアXの治療中」 「赤みと痒みが強い」

病院で見られた症状:

  • 脱毛と赤み(胸部、腹部、後肢)

Osumi

Osumi

 アロペシアXは、「毛周期停止」ともよばれ、犬に生じる痒みのない広範囲の脱毛です。原因は未だに特定されていない病気です。 犬種特異性があり、ポメラニアンに多く発症する印象がありますが、トイプードルやパピヨン、チワワにも報告されています。

 このポメラニアンさんは他院でアロペシアXの治療をしていて良好でしたが、今回突発的に脱毛が進行してきたそうです。

 お話しでは本人は痒みがあるということです。痒がる部位を視診で確認すると、皮膚に赤みがありました。
本来アロペシアXは、炎症を伴わない脱毛なので赤みや痒みを伴うことはありません。したがって、これらの症状が認められるということは、何か別の皮膚病に罹患している可能性があります。

ひとことメモ

アロペシアXの除外診断

 皮膚の検査を行うと、細菌とそれを貪食する好中球が多く認められました。これは膿皮症の所見であり、皮膚に感染が認められます。
アロペシアXでは、毛質が乾燥した柔軟性のない毛に変化する傾向にあります。また表皮(最も外側の皮膚)は乾燥し、皮膚バリア機能も落ちてしまいます。
これらが原因で脱毛以外に二次性の膿皮症を引き起こすことがあります。
 今回のポメラニアンさんも、アロペシアXで脱毛した部位が顕著に赤く炎症を起こしていたことから、二次性の膿皮症に罹患していたと考えられます。

 膿皮症の治療は、第一選択とされる抗生剤の投与と抗菌性の高いシャンプーを使用しました。

 重要なのは保湿です。
抗菌性のシャンプーは皮膚刺激性が強いため、感染が認められなくなったら早めに保湿性の高いシャンプーで維持治療に移るべきです。最近では、洗浄はあえて抗菌性のシャンプーを使用しなくてもしっかりと回数を重ねれば細菌は落とせるという報告もあります。

Osumi

Osumi

 数カ月が経過したら、胸部、腹部ともに痒みが治まりかなり発毛が進みました。「アロペシアXだから脱毛も仕方がない」といってあきらめず、他になにか皮膚病が無いか注意することも大切です。

 最初にお話ししたように、アロペシアXは原因が未だにはっきりとしない病気ではありますが、特定の犬種にバリカンをかけると生じるとされています。一度バリカンでカットして生えてこなくなったら大変ですね。むやみに体毛はカットしないように、注意しましょう。