2023年5月22日
モルモットの顔面の脱毛
モルモット
1か月齢 オス
(一緒にモルモットを数匹飼育)
「鼻の周りがはげている」
病院で見られた症状:
- 鼻と口の左側が広く脱毛
(右側は脱毛していない)
(痒みは無い)
モルモットも様々な原因で脱毛しますが、若齢期のモルモットは免疫力が弱く、ダニなどの外部寄生虫感染や真菌症(カビ)も強く疑われます。
病変部位の毛を用いて顕微鏡で確認する検査(毛検査)をしました。
理想的には病変部位の皮膚を削り毛根周囲まで採材して顕微鏡で確認する検査(皮膚掻爬検査)をすべきですが、元気なモルモットさんはなかなかさせてくれずストレスを与えてしまうため今回は避けています。
顕微鏡では寄生虫は見られず、被毛に丸いプツプツが連なるような所見がありました。
被毛に感染した真菌が集塊となり見られた場合、このような見え方となります。真菌の感染が疑われるため、念のために真菌培養検査を行いました。 被毛を採材して専用の培地で培養を行います。感染があれば1週間程度で真菌が生えてきて、被毛に真菌が存在したことがハッキリします。
一週間培地を観察しました。
次第に培地上にフワフワとした白い塊が広がり、もともと黄色かった培地の色が赤く変化していきました。
この白い塊が真菌の集合であり、培地の色は真菌の発生でpHが変化したことにより変化していきます。
なお、真菌の診断試験にはウッド灯試験という方法もあります。部屋を暗室にして、調整された光を当てると真菌が光って見え感染が確認できるという便利な検査です。
しかし、この検査は真菌の種類により発光性が異なります。猫でよく発見されるMicrosporum canisでは強い発光性があるのですが、モルモットで感染が多いとされるTrichophyiton mentagrophytesはあまり発光せず、当院でもモルモットの検査は実施していません。
このような皮膚のカビの疾患(皮膚糸状菌症)の治療法としては、抗真菌性の飲み薬やシャンプー療法、外用療法を実施します。
この子の場合は、感染が局所的であり、若齢ということから飲み薬での治療は不向きと考えました。しかし、部位が顔面ということでシャンプーも洗浄しにくく、外用薬も舐められてしまうかもしれないという、それぞれに対する難点がありました。
最終的に、飼い主様とご相談してシャンプー療法での治療を選択してみました。
飼い主様のシャンプー療法の努力もあり、感染して脱毛していた皮膚は3週間ほどできれいに発毛してきました。
治療終了できるかどうかを調べるために、再度真菌培養検査を実施したところ1週間たっても培地に真菌は生えてきませんでした。
これで一度治療終了となりました。
このように、真菌感染症は感染の確認と治療を含めると完治まで少し時間がかかります。
成長期だったこともあり、治療を終えたときは顔も少し大人びましたね!
治療を終えた後も、再感染や、生活環境の調整、同居のモルモットたちの体表に同じ病変がないか注意して観察することが大切です。
また、ズーノーシス(人獣共通感染症)であり生活の中でヒトに感染する可能性もあるため、飼い主様の皮膚がおかしいというときも要注意です。
モルモット以外の動物でも真菌症の脱毛はあります。発症部位も顔面に限らないため、脱毛が気になったら一度ご相談ください。