2024年1月6日
チンチラの糖尿病
チンチラ
4歳 メス

「元気、食欲がない」
病院で見られた症状:
- 元気消失
- 脱水

元気消失、食欲低下というのは、どの病気であっても病態が重くなれば現れるため、これらの症状で原因を特定することは難しいです。
そこで全体的なスクリーニング検査を行うために血液検査を行いました。すると、血糖値と肝酵素値の上昇が認められました。ビリルビンは基準値の範囲内でしたが、軽度に上昇していると言えます。
項目 | 今回の 検査値 |
基準値 |
---|---|---|
血糖値 (mg/dl) |
327 | 60~125 |
ALT(肝酵素値) (U/L) |
100 | 10~35 |
AST(肝酵素値) (U/L) |
881 | 15~100 |
ビリルビン (mg/dl) |
1.0 | 0.6~1.3 |
チンチラでは、稀に糖尿病が発症します。飼い主の方は、初期の血糖上昇には気づきにくく、食欲が低下してからご来院されることが多いです。この時ケトアシドーシスと呼ばれる体内のエネルギー供給がうまくいかなくなることで起きる血液の酸性度が異常に高くなった状態になっていることが多く、肝臓が強く負担を受け、肝酵素値が上昇しており場合にっては粘膜色が黄色くなる「黄疸」という症状を引き起こしてることもあります。
今回のチンチラさんも血液検査結果から、糖尿病とそれに起因するケトアシドーシスを第一に疑いました。
理想的には尿検査も行い尿中に糖分が高いことを確認したかったところですが、病態が悪く緊急性があり、時間をおいて数回測定した血糖値がいずれも高血糖であったため糖尿病は確定的だったため、治療にとりかかりました。
治療は、グリベンクラミドという経口血糖降下剤を用いました。
この薬は、膵臓でのインスリン分泌を促進する作用があり、犬猫で一般的に使われているインスリン製剤とは作用機序が少し異なります。直接インスリンを体に入れるわけではない分、インスリンが効きすぎて低血糖になるリスクを減らせるとも考えられています。

インスリンや糖尿病ってなに?
ケトアシドーシスに対しては、点滴の通院と利胆剤、消化管運動亢進薬の服用を行い治療しました。食欲はすぐに改善し、肝酵素値も1~2週間ほどで正常値まで良化しました。
血糖コントロールは、初期の投与量が難しいものです。体重と食事量に合わせて数週間ごとの血液検査を行い、地道な投与調節を行いました。
その結果、血糖値は徐々に下降してチンチラの本来の血糖値に近くなってきました。糖尿病の血糖コントロールは、完全に正常血糖を保つことは難しいですが正常に近い血糖値で適正な生活を保てるかが重要です。
チンチラにおいて糖尿病の完治は難しく長期的な治療になるかもしれませんが、この治療で安定した血糖値を維持できれば通常の生活を送ることができます。
チンチラの糖尿病には肥満が原因として挙げられます。事前に糖尿病を予防するためにも、定期的な体重測定、生活環境の改善による運動不足の修正、食事制限などを行い肥満を防止することが大切です。


元気食欲いっぱいになってよかったですね!