Osumi

2025年2月1日

モルモットの血尿の原因

ご来院された動物さん

モルモット
4歳 メス

ご来院の理由

「血尿が出る」 「おしっこをするとき痛がる」

病院で見られた症状:

  • 血尿
ひとことメモ

モルモットの尿の色

 尿検査を行ったところ、血尿を確認したため泌尿器または生殖器での出血が疑われました。 モルモットの血尿が確認されたら

  • 泌尿器系疾患(膀胱炎、尿石症など)
  • 生殖器系疾患(卵胞嚢腫、子宮炎など)

の両方を鑑別して診断する必要があります。

 では、このモルモットさんはどちらでしょうか。腹部レントゲン検査で血尿の原因を見てみます。

問題点はここ!
Image 1

画像をクリックすると注目点が出ます

 尿道に大きな白い影( )が認められます。これは尿道の途中まで落下した尿石であり、これが原因となり疼痛や出血を引き起こしている可能性が考えられます。
 それとは別に、モルモットさんの右腹部に白い空間()があります。この空間がその他の腸を圧迫している様子が通常のモルモットさんの腹部所見と異なります。超音波検査でこの部分を確認すると、風船状に膨らむ組織が他の臓器を圧迫していました。これは卵胞嚢腫と呼ばれ、中齢のメスのモルモットに発生し、悪化すると元気食欲の低下や血尿を引き起こす生殖器疾患の一つです。

 さて、今回のモルモットさんでは泌尿器と生殖器の両方に病変が見つかりました。
 どちらが血尿の原因か瞬時に判断は難しいですが、排尿時の疼痛を伴うのはおそらく尿石症と仮診断しました。 モルモットのメスは犬猫よりもの尿道が広いため、小さい尿石であれば自然落下したり、麻酔下で膣孔から用手で摘出可能なこともあります(モルモットのオスの場合はペニスがあるため尿道は狭く、自然落下は難しく閉塞することが多いです)。

 今回は、結石の用手摘出を検討しました。
 鎮静鎮痛処置を行い、鉗子を用いて膣孔からの尿石除去を試みました。この時、結石が鉗子ではギリギリ取り出せないような難しい深さにあり、処置中の除去は断念しました。しかし、結石の位置を確認して、少し出口に近づける処置を行うことができました。

 これが功を奏して、次の日に結石が自然落下しました。1cm程度のざらついた結石です。これが尿道内にずっと詰まっているとなると、疼痛や出血が生じたり、食欲がなくなってもおかしくありませんね。

Osumi

 疼痛と出血が治まりましたが、数週間してからまた出血が認められました。
 やはり、血尿の原因は尿石症だけではなく、卵胞嚢腫も影響していたようです。

 今度は麻酔下で卵巣子宮全摘出を行うことにより、原因となる卵胞を摘出しました。右卵巣は透明な液体が貯留して膨れ上がった状態になっていました。

Osumi


 術後は血尿は再発することが無いことから、今回の血尿は尿石症卵胞嚢腫の2つとも原因になっていたと考えられます。 モルモットの血尿が認められたら、泌尿器と生殖器の両方を疑って診断していくということが大切です。