2025年5月29日
猫の眼が腫れている
ネコ 雑種
6ヵ月齢 未避妊 メス

「右眼が腫れている」
病院で見られた症状:
- 右眼の充血
- 右眼の腫れ
- 目やに

猫が「眼が腫れている」という主訴でご来院されることは多いです。若齢の猫は免疫力が不安定な面もあり、それに加え保護猫、外飼い、同居猫が多い等の様々な因子が加わることにより感染症になりやすいです。
動物病院でも、若齢猫では猫ヘルペスウイルス感染症に罹患して、充血、眼の腫れ、鼻汁・くしゃみといった症状を示すケースは多いです。
さて、この猫さんはどうでしょうか。
この猫さんは、もともとノラ猫さんで保護されました。同居にも他に2匹の元ノラ猫さんがいます。年齢はどの同居猫も若く成長期から1~2歳ですが、皆しっかりと初年度のワクチン接種を終えウイルス感染予防を終えています。
今回の症状は、右眼に偏った結膜炎、やや痛みを伴う様子もあります。くしゃみや鼻汁は認められませんでした。 「フルオレセイン染色」と呼ばれる、黄色い検査紙を用いて角膜の損傷を調べる試験を行いましたが角膜の損傷は無いようです。
腫れている眼から結膜を少し綿棒で擦り粘液や細胞を採材し、染色して顕微鏡で観察しました。
すると結膜上皮細胞の核の近くに少し紫(好塩基性)の塊()が見られました。これは、クラミドフィラ※とよばれる原虫が感染した時に細胞内で病原体を作る時に形成する細胞質内封入体という塊です。
※クラミジア科クラミドフィラ属の病原体であり「クラミジア」ともよばれます。


原虫とウイルスって何が違う?
この猫さんは「猫クラミドフィラ感染性結膜炎」と診断して治療を開始しました。
猫のクラミドフィラ感染性結膜炎は、初期は今回のような片側性の結膜炎から始まることが多いようです。
ドキシサイクリンという抗生剤の内服を行いました。この抗生剤はクラミドフィラには感受性を示す代表薬としてよく用いられますが、食道に長時間とどまると食道炎や食道狭窄を引き起こす恐れがあるため、薬を水や食事と一緒に投薬することが大切です。猫は、口に入れたものが胃まで到達するまでの時間が長いという報告があるため、薬を流しいれてあげるということですね。
右眼の腫れは徐々に回復し、2週間すると正常に戻っていました。しかし、体内の病原体排除には4週間はドキシサイクリンの投与が必要という報告があるためその期間はしっかりお薬の投薬を続けてもらい、完治を確認しています。

猫のクラミドフィラ感染性結膜炎と猫ヘルペスウイルス感染症は臨床症状が似ているため、判断が付きにくい疾患だと感じています。
今回、顕微鏡で確認した細胞質内封入体も感染してしばらく時間が経つと数が減ってしまい確認しづらくなります。さらに、この2つの感染症を同時に罹患している場合もあります。
生活環境やワクチン接種歴を確認した上で、外傷ではないか、感染症なのか、何に感染しているのか、一つ一つ確認していくことが大切になります。
