2025年4月24日
お腹の赤みが治らない
ホーランドロップ
5歳 オス

「お腹の皮膚が荒れている」 「臭いが強い」 「目周りも赤い」
病院で見られた症状:
- 腹部~尾部の脱毛・炎症・汚れ
- 異臭

この半年でお尻の汚れが徐々に悪化し、今年1月から急激に下腹部が荒れたという主訴でご来院されました。
下腹部にはベットリとした汚れ、お尻周りは尿と便の汚れが広く付着していました。洗浄を行うと、汚れ部位の下には強い炎症が広範囲に広がっていました。1カ月間、殺菌性のある消毒液の塗布のみ行ってきたそうですが、大量の汚れに対して消毒のみではなかなか治療は困難です。


これは湿性皮膚炎と呼ばれ、このウサギさんのように後ろ足や陰部の周りに生じる場合は後ろ足が動かしづらくなる(後躯麻痺)や肥満が原因の場合が考えられます。
湿性皮膚炎は、皮膚に付着した角質(古くなった皮膚)や細菌をしっかりと落とす必要があります。これは、消毒ではなく洗浄という考え方です。
炎症部位で塊になった毛を刈り、適度に温めた生理食塩水でしっかりと洗います。この時にゴシゴシ擦らないことが大切です。ウサギの皮膚はもともと皮膚が薄いため弱く、さらに汚れと炎症で弱った皮膚は少しのダメージでも簡単に出血してしまいます。
最初は痛々しい皮膚の状態ですが、最初の数週間は毎日下半身の洗浄を繰り返しました。


2週間の洗浄を行うと炎症はかなり治まり、少しずつ発毛し始めました。 洗浄頻度を2~3日に1回と減らして経過を見ていきました。


かなり発毛が進み、足回り腰回りは通常の毛量と皮膚の状態に戻りましたが、最終的に陰嚢の周囲と右足背側はどうしても汚れが残ります。
今回のウサギさんは、X線検査において大きな骨格の異常が認められませんでした。
しかし、ご自宅での生活の様子や姿勢をお写真で見させていただくと、汚れている足を下につけて座っているシーンが多いため骨格や神経の異常は否定できません。
骨格や神経に原因がある場合、なかなか完治が難しく定期的な洗浄ケアを繰り返す長期的な治療になることもあります。
しかし、生活環境の改善と定期的な汚染部位の洗浄を行うことで、皮膚の重度の悪化を予防することができます。床材の見直しはとても重要です。ケージ内では、洗濯や交換可能なクッション性のある生地を敷いて上げると良いです。SUSU(山崎産業)などは、クッション性もあり交換しやすいためおすすめしています。床材の注意点は、
- 定期的な交換
- 齧るクセがあるウサギは避ける
長期的な目線で考えてウサギさんの生活の質(QOL)を高めていきましょう。
