2025年6月20日
季節性アレルギーと新しいお薬のチャレンジ
チワワ
12歳 避妊済み メス

「口周り、足回りの痒み」
病院で見られた症状:
- 口周りの脱毛、赤み
- 足裏の赤み
- 肛門周囲の赤み


四肢の肉球間は赤くなっている

肛門周囲も赤い
このチワワさんは当院開院時(2年前)から、両側(左右)対称性に口周り、足裏、お尻周りの赤みと痒みで来院されています。
- 季節性(春~秋)に痒みが強い
- 両側(左右)対称性の炎症・脱毛

犬アトピー性皮膚炎の診断基準
季節に応じてオクラシチニブ(アポキル)の調整を続け、シャンプー療法や保湿を加えながら皮膚の状態を保持しました。しかし、毎年2月以降になるとアポキルの回数や量を多くしてもアレルギー症状は悪化します。
特に、口周りは掻痒が強くなり、脱毛も激しくなる傾向があります。
脱毛時に皮膚検査を行うと、酵母菌(マラセチア)がたくさん集まっています。
感染性が悪化した時は抗真菌薬を用いた治療も追加しました。

2月以降集中的に悪化する口周り

口唇周囲のマラセチアの集塊
9~10月と秋になると、同服用量でも皮膚はかなり良化して、痒みも落ち着いてきます。飼い主様とご相談してお薬を減らすかどうかを判断していましたが、すこし炎症に火が付くとまた同様の脱毛症状や2次性の膿皮症を引き起こす可能性があるため慎重に調整していました。
炎症は通年あるためアレルゲン(アレルギーの原因となる因子)は複数あるかもしれませんが、明らかに春に炎症が強い季節性の犬アトピー性皮膚炎です。
チワワさんの性格と口周りということもあり、外用薬やシャンプー療法もなかなか難しいという問題がありました。
今年の初旬からイルノシチニブ(ゼンレリア)という内服薬が、アレルギーの薬として販売され始めました。アポキルと作用機序は同じですが、アポキルよりも作用時間が長く1回の服用で1日掻痒を抑える効果を示すとされています。
さて、アポキル1日2回でも口周りはなかなか難しかったので、今年の春はアポキルの代わりにゼンレリアを試してみました。
現在3か月経ちましたが、まだ脱毛の進行はありません。

ゼンレリアも内服薬なので、下痢・嘔吐などの有害事象は認められるようです。実際、別の犬の患者さんでゼンレリアを投薬を試された方の中に、便がゆるくなってしまったという犬がいました。
既にアポキルで痒みをコントロールできているのであれば無理に薬を変更する必要はありませんが、より投薬回数を減らしたり、炎症や掻痒を抑える治療を探すのであればゼンレリアを試してみるのも良いと考えています。
