ご来院されたチンチラさんは、顔面、特に鼻先の毛が薄く短くなっていました。毛づやも悪く、フケも多くみられます。
　あまり痒みは無いようです。

　脱毛部位周囲の毛を採材して顕微鏡で確認すると、毛とは別の細長い線上の構造物が複数みられました。これは真菌（カビ）を疑う所見です。
　そこで、真菌培養検査を行いました。毛を抜いて黄色い培地に置いておきます。1週間ほど経過を観察して、培地が赤く変色し真菌が生えてくるかどうかを確認します。

　培養開始から4日で、培地は赤く変色し真菌が増殖してきました。
　顕微鏡検査と真菌培養検査から、皮膚糸状菌症 という真菌の感染症と診断しました。
　今回の症例のように、チンチラの皮膚糸状菌症は頭部に発症することが典型的で、特に鼻先が脱毛しているチンチラさんはよく来院されます。
　痒みは必ずあるわけではなく、今回のように脱毛とフケだけというケースも多いので注意が必要です。

　治療は、抗真菌剤の内服投与を行いました。
　内服薬以外にも生活環境の改善が大切です。チンチラは体表の衛生状態を保つために砂浴びをする習性があります。この砂にもカビが付着している可能性があるので、できるかぎり頻繁に交換してあげて清潔な砂で砂浴びさせてあげましょう。