Osumi

2025年11月16日

痛そうな歩き方の原因を探す

ご来院された動物さん

トイプードル
15歳 去勢済み オス

ご来院の理由

「歩き方がおかしい」

病院で見られた症状:

  • ぎこちない歩き
  • 背中の触診で痛みがある
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 今回のトイプードルさんは、前日の夕方から腰痛がある、抱きかかえたら甲高い声で鳴くという主訴でご来院されました。
 触診してみると、確かに腰背部を触った時に痛みがあるようです。歩き方もどこかぎこちない様子です。
 この年齢の犬だと腰背部の関節や神経、後ろ足の関節が原因で歩様に異常が出るケースは良くあります。よくある症状は足を引きずる(跛行)、痛くて足をあげる(挙上)というものです。

 しかし今回のトイプードルさんは、足を引きずったり挙げたりといった典型的な跛行とは少し異なる歩き方です…

X線検査の異常
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画像をクリックすると注目点が出ます

 X線検査を行うと、腰椎の並び方に不安定性があります()。変形性脊椎症を引き起こしており、ここから椎間板ヘルニアにつながっている可能性もあります。
 脊髄の圧迫の確認はX線検査では難しいため、二次検査機関でCT検査やMRI検査をしていただき、今回の症状の責任病変となっているのか判断してもらうのが理想です。

 X線検査において、もう一つ注目点があります。それは、肝臓の大きさです()。肝臓が通常のサイズよりも大きく写っており、何かしらの負担を受けている可能性があります。
 高齢であり内部臓器の異常も疑われるため、血液検査と超音波検査も行いました。特に、肝臓が腫大するということなので副腎皮質ホルモンの異常も疑われる慎重に行う必要があります。

 血液検査では、肝酵素値の上昇が認められました。
 超音波検査を行うと、左右の副腎が腫大していました。通常の副腎サイズは4kgのトイプードルさんならば3~4mm程度ですが、今回の検査では左右ともに7mm程度まで腫大していました。
 これらの、肝臓の数値、肝臓の腫大、副腎の腫大を総合的に評価して副腎皮質ホルモンの検査を行ったところ高い数値を示したため、副腎皮質機能亢進症と診断しました。

ひとことメモ

副腎皮質機能亢進症
(クッシング症候群)について

 さて、今回の歩き方ですが腰の痛みだけが原因なのでしょうか。

 二次病院の神経科に歩き方の評価やMRIを依頼して、歩行異常の原因を精査していただきました。
 筋電図検査など追加検査も行ってもらったところ、歩様異常は副腎皮質機能亢進症を原因とするミオトニアという結果でした。
 ミオトニアとは、自発運動や電気的刺激をきっかけに筋肉が「縮んだあとにゆるみにくくなる」状態のことです。
 つまり、力を入れて動いたあと、すぐに筋肉が元に戻らず、動きがぎこちなく見える病気です。ロボット様や竹馬様の歩行とも言われています。腎皮質機能亢進症からミオトニアが誘発される原理は明確ではないそうです。

 このトイプードルさんは、胸腰部椎間板ヘルニアを原因とする疼痛もあるそうですが、今回の足を伸ばしながらの歩き方はミオトニアの独特の歩様だそうです。
 ミオトニアによる歩様異常は副腎皮質機能亢進症を管理できたとしても回復が難しく、生涯続いてしまう可能性が高いとされています。ただし歩けなくなることは珍しいとされているため、副腎皮質機能亢進症を管理して歩様以外の症状を管理していくこと、椎間板ヘルニアによる疼痛管理を行うことが大切です。
 副腎皮質機能亢進症は歩行異常がメインではありません(上記の「ひとことメモ」参照)。つまり、この治療の意義は、歩行の治療というよりも肝臓や皮膚などそのほかの状態の悪化を防ぐために行うという方が正しいと言えます。

 副腎皮質機能亢進症に対しては、飲み薬で治療を開始しました。副腎皮質ホルモンの定期的な数値の確認を行っており、現在は安定した数値が得られています。
 副腎皮質ホルモンの値は回復しても、やはり歩様は変わらないようです。しかし、この治療の効果により肝臓の値は良くなり元気食欲、飲水量も異状なく維持できています。
 歩様から発見できる内部臓器の異常やホルモンの異常もあるということが分かる症例でした。