2026年1月22日
猫の口の痛みの原因
スコティッシュフォールド
10歳 去勢済み オス
「口が痛そう」
「口臭が強い」
病院で見られた症状:
- 歯肉炎
- 流涎(よだれ)
- 口臭
今回ご紹介する猫さんは、口の痛みを主訴に来院されました。
診察室で口腔内を見てみると、局所的に歯肉炎、強い歯石の付着が認められます。臼歯(奥歯)を詳しく確認しようとすると、猫さん自身のストレスも強くなるため、落ち着いて評価・処置を行うには麻酔下での対応が必要になります。
麻酔をかけて口腔内を細かく確認し、必要な処置をすることにしました。
麻酔処置に加えて、歯科診断で非常に重要なツールが歯科用X線検査です。
歯は、歯冠(口腔内に出ている部分)と歯根(歯槽骨に埋まっている部分)に分けられますが、歯肉や骨に覆われているため、実際の状態を肉眼だけで正確に把握することは困難です。
どの歯が痛みの原因となっているのか、どの歯を処置すべきかを判断するためには、1本1本を麻酔下でX線検査することが重要になります。
口腔に複数の歯肉炎
X線検査では薄くなる歯が認められた
口腔内X線検査を行うと、一部の歯が溶けています。複数の歯で溶解が認められましたがそのうちの一か所を載せています。(
)。
写真の2本の歯のうち、左側の歯はレントゲン写真を見ても明らかに密度が薄く溶けたような様子をしています。これは、破歯細胞という「歯を壊す働きを持つ細胞」が、何らかの原因で歯の組織を吸収してしまうことで生じる歯の吸収病巣という疾患です。
猫の歯の吸収病巣は、現在のところ直接的な原因が解明されていません。
しかし、加齢とともに発生率が増加していることや歯周病や歯肉口内炎との関連が示唆されています。その他、外傷、FIV(猫エイズ)感染、ビタミンAやビタミンDの過剰摂取などとの関連も疑われています。
歯の処置としては、抜歯または歯冠(表に出ている部分)の切除となります。歯根(歯の根元)が歯槽骨と一体化してしまっている場合、抜歯は難しく歯冠を切除して歯肉を縫合します。
歯の吸収病巣が発生する時、1本の歯だけではなく複数の歯に同時に現れることもよくあります。
この猫さんの場合、口腔内には左右の上顎、下顎に複数の吸収病巣が存在しました。
X線検査で状態を確認して歯冠切除または抜歯を行い、縫合しました。
術後はよだれや口臭も落ち着き、食欲も通常通りというお話を頂きました。
しかし、歯の吸収病巣は経時的に進行する病変であり、今正常な歯もいずれ吸収され始める可能性があります。また、歯磨きをしても予防に限界があるケースもあります。
口の痛みや口臭の進行に気づいた場合は、早めに麻酔下で原因となる歯を適切に処置することが、猫さんの生活の質を守るために最も重要な対策だと言えます。


