Osumi

2023年9月11日

乳歯の遺残と破折

ご来院された動物さん

ヨークシャーテリア
5歳 去勢済み オス

ご来院の理由

「乳歯が1本残っている、色が変わってきている」

病院で見られた症状:

  • 左上顎の犬歯の乳歯の遺残と破折(
  • 全体の歯に歯石
Osumi

乳歯は、生後約半年くらいから生えかわりはじめ、1歳半頃(遅くとも2歳)までにすべての歯が生え変わります。しかし、歯の生え方によっては乳歯が抜けずに永久歯が生えてきてしまうことがあります。この状態は乳歯遺残と呼ばれ、歯並びが悪くなる原因や、乳歯と永久歯の間に食べ残しが残りやすくなることで歯周病が進行する原因となります。

今回のヨークシャーテリアさんは、遺残した乳歯がさらに破折(歯が折れること)していました。 破折すると、歯の中心にある歯髄から歯の根元への感染が進行し、根尖性歯周炎へつながることがあります。 そこで今回は、麻酔下で遺残乳歯の抜歯とその他の歯の異常の検査を行いました。

遺残した乳歯は永久歯と密接しているため間から歯周病が進行しやすかったり、今回のように折れて露髄すると感染を起こして、根尖性歯周炎の原因となることがあります。歯根が残らないように歯科用レントゲンを用いて慎重な処置を行いました。歯肉を切開し、歯槽骨(歯の上を覆う骨)を削り丁寧に乳歯を取り外します。最後に歯肉を覆いかぶせ縫合します。

処置時

Osumi

縫合終了

Osumi

口腔内を肉眼的に見るとこれで終わりのようですが、歯科用レントゲンで確認すると別の大きな異状が見えてきました。

右側の上下の前臼歯に一部歯冠が見えない歯があります。外から見ると歯が無いように見えますが、実は折れた歯の根っこだけ残っているということです。 これらの歯は歯髄が残っていることもあり、しっかりと取り除いておくことが大切です。

下顎の歯の左右の比較

Osumi

消失した歯のレントゲン

Osumi

歯冠の折れていた歯の歯根部分を取り除いて、レントゲンで確認しました。きれいに取れていたようなので縫合してこの部分の処置は終了です。

Osumi

このヨークシャーテリアさんは、「ひづめ」が好きでよく嚙んでいたということでした。実は、市販されている犬用のひづめ、骨などはよく歯を折る原因となります。なるべくかたすぎるおやつは与えないようにしましょう。

歯が折れてしまうということから発生する歯周病は多いです。気になる方がいたら、一度ご相談ください。