2023年11月9日
あぶらとフケと痒みの治療
シーズー
8歳 オス
「脱毛と痒み」
病院で見られた症状:
- 頸、腹部の赤みと脱毛、皺
- 足の赤み
- 目の周りの脱毛と乾燥
- 外耳炎
初診時は、全身的に脂っぽく体臭がありました。また、フケがかなり多く見られました。
血液検査では、すべて正常値であり健康的という結果が出ました。甲状腺ホルモン(代謝のホルモン)も正常で、脂っぽさは代謝異常が原因ではないようです。
皮膚の検査を行うと、体表にマラセチアという真菌(カビ)が多く散在しました。顕微鏡で見た時に細長いわらじ状に見えるカビです。体表の皮脂を栄養に繁殖するので、多すぎるときは脂っぽすぎるということが分かります。 その他、外部寄生虫は検出されませんでした。
このシーズーさんは、脂漏性皮膚炎とマラセチア皮膚炎として治療を開始しました。
脂漏性皮膚炎は、簡単に言うと「あぶら症」ということになりますが、皮膚細胞の入れ替わりが速いためフケが大量に出てきます。
そこで、皮脂やフケを抑えるためにシャンプーで体をこまめに洗い、さらにしっかりと保湿を行うことが大切となります。
また、体表のあぶらによりマラセチアが増殖し炎症がさらに強まるため、抗真菌薬による治療も必要です。
体表の感染が強い時には抗菌性の強いシャンプーから開始するケースもありますが、皮膚への刺激性も強いので注意が必要です。むしろしっかり角質を落とせば必要以上に抗菌しなくてもマラセチア数は減少するという報告もあるため、今回は角質溶解に有効なシャンプーで週2回洗うことから開始しています。
外耳炎に対しては、耳の洗浄方法をご指導させていただき、ご自宅で行っていただきました。
治療用のシャンプーも種類が多く、混乱される飼い主様も多いかと思います。シャンプーはその成分から大まかに4つに分類されます。
分類 | 効果 |
---|---|
保湿 | 皮膚の水分保持を助ける |
止痒 | かゆみや炎症を抑える |
角質溶解・脂漏除去 | 余分な皮脂を除去し、角質(垢・フケ)の産生を押さえる |
抗菌・抗真菌 | 皮膚感染の治療・予防 |
シャンプーとは別に、保湿のためのコンディショナー、脂を取るために行うクレンジング、その他薬浴など様々な方法で皮膚の洗浄や保湿を行うことができます。診察で皮膚をチェックした上で、その動物さんに合う洗浄方法を選んであげましょう。
3か月経つと、見違えるほど顔や体に毛が生えました!
飼い主様が大変治療に積極的であり、適切なシャンプー療法と投薬を行ってくださったこと、シーズーさんもシャンプーや耳道洗浄に付き合ってくれたことが治療効果を生んでくれました。
治療から3か月
治療から3か月
脂漏症は、別に何か根本的な原因があり誘発されているケースが多いです(続発性脂漏症と呼ばれます)。このシーズーさんは、生活習慣や皮膚検査から、裏に犬アトピー性皮膚炎が存在する可能性があるとして、痒み止めの服用とアレルゲン(アレルギーの原因)の追及を行っています。
現在はシャンプーの回数も週1回、薬の服用もかなり少なくすることができました。いずれは薬を服用しない状態にできるように、飼い主様、シーズーさんと皮膚管理を頑張っていきます。